これから開催される、「大阪・関西万博2025」。70年に開催された、大阪万博のことを懐かしく思い出される人もたくさんおられると思います。強烈な、集客を成し遂げた記憶しか私自身はありませんが、残っている資料を目にするたび、(現代では問題となること確実)日本全国から、海外からも観光客が集まった、という記憶が頭の中で反芻されます。当時の映像を見ていると、「人混み」にもみくちゃにされて、混雑のせいで交通が麻痺し、道路で野宿された方もおられたようです。2025万博では、効率的な入場者コントロールをめざしてるようですが。
これまでは、国威発揚型の万博が数多く開催されているので、参加国にとっては自国の産業、工芸などの展示が多く、言ってみれば国際的なお国自慢大会で、しかも、参加国同士が一同に比較される、言ってみれば、クオリティ勝負の会場ともなっていたようで、参加国担当の役人にとっては、貿易振興に役立てるために、発奮せざるおえないイベントだったことでしょう。
近年、新型の万博を提唱する方々の努力にて、お国自慢ばかりの万博は比較的少なくなったように思われますが、それでも、一般の方々にとっては、「長い旅路を経てたどり着いた展示会場で、お目当てのモノを見物するもの」という観念は拭い難いことと思われます。
そのような懸念もあって、「大阪・関西万博2025」は開催決定後、著名人らが「国威発揚型」ではなく、新しい万博を目指して活動を活発にし、大都市圏において、興味ある方々に向けて、いかに「新しい万博」を広げていくか、地道に広報活動を繰り返されておられました。
しかし、国威発揚型の万博は、ビジュアル的にもわかりやすく、お祭り気分を盛り上げるには最適でしたが、お題目がわかりにくいと盛り上がりに欠けるようで(70年万博の時でさえ開催直前まで勢いがなかった様です)、開催を数ヶ月後に控えた現在でも集客に頭を痛めておられるようです。
では、「国威発揚」でないならば、いったい何を「大阪・関西万博2025」は見せようとしているのかを個人の目線で考えてみました。日本の将来的な課題を見据えた「高齢化社会対応」もある意味、主催者からすれば一番の目玉としたいコンテンツですが、大きく捉えると「壮大な国際社会実験発表ステージ」としたいのでは、と思っています。いろんな国が、社会課題に取り組んだ事業(結果)を一同に集めて、そこで使われた知恵を共有したいのだと思います。
当方の推察ですが、ドバイ万博あたりから活躍されている「有名万博プロデューサー」の方の語った言葉を注意深く聞いていますと、日本の古くからある高密度の巨大都市(江戸)を支えてきた工夫や、そのほかの地方都市に点在する知恵、また同様の世界中の成功事例(知恵)を持ち寄って、開催期間中はもとより、閉会後も、「世界の知恵を絞った成功例」にアクセスできるようにと考えているようです。
しかし、当初、個人的にひどく悩んだのが、「世界の知恵を絞った成功例」というが、そのようなものがどこにあるのかです。しばらく悩んだ末に、世の中の八百万の事業は全て「成功例」で、失敗したものは残っていないから、現存する事業は全て参考になるという考え方であると気が付きました。
空間デザインを生業にする当方の立場からは、日本中に点在し、それぞれの地方に現存する、もしくは現存しなくとも、概要なり、関係された方々の知恵が何かの形で残るものは、世界の人が参考にできる存在だ、と今は考えています。
ですので、会場内の特別なパビリオンも、医療関係の先端技術のデモンストレーションも、見たこともない、新しいもの、技術、製品に触れる感動もあろうかとは思いますが、何かしらの社会課題を抱えておられる世界中の方々は、是非、万博開催の勢いで構築されるであろう、リアルワールドとミラーワールドにおいて、「世界の知恵を絞った成功例」に触れ、課題を解決するためのヒントを掴んでいただくことを願っています。
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